FOLLOW THE WIND





No
Title
Words
Music
Judgement
VIRUS
森雪之丞
氷室京介
★★★
Weekend Shuffle
森雪之丞
氷室京介
★★★
FOLLOW THE WIND
森雪之丞
氷室京介
★★★
MONOCHROME RAINBOW
森雪之丞
氷室京介
★★★★
LOVE SHAKER
森雪之丞
氷室京介
★★★★
Claudia
森雪之丞
氷室京介
★★★
FOOL MEN'S PARADE
森雪之丞
氷室京介
★★
SACRIFICE
森雪之丞
氷室京介
★★★
RAP ON TRAP
森雪之丞
氷室京介
★★
10
ARROWS
森雪之丞
氷室京介
★★★★






批評


久方ぶりのニューアルバムです。待ちわびましたよ。先行シングルも一枚だけだったので、知らない曲が8曲もあり非常にグッドです。今までのアルバムでは大概は新曲が6曲だけだったものですから。


とはいえ、このアルバムが発売される前に行われた「Case of Himuro」のライブでは「FOLLOW THE WIND」「LOVE SHAKER」を私はすでに聴いていました。この二曲はなかなかの出来だったので、当時の私は期待できると思っていました。それで実際聴いてみると―良いアルバムなのですが―少しだけ違和感を感じました。それは後に述べるとして、とりあえず分析からしていきましょう。


まずはサウンド面。バンドメンバーが全て外国人なだけあって(?)パワーのある音に仕上がっております。邦楽っぽいのは「FOLLOW THE WIND」ぐらいですね。打ち込みの音もうまく絡まって格好良い仕上げになっております。作曲の面では我らが氷室さんによるもので文句はありませんが、作詞が全て森雪之丞氏になっており、少しだけ悲しいものがあります。


特に気になったのはラップ・ヒップホップ調の曲が3曲もあったことですね。正直言って私はそういう関係の曲は好きではありません。オリコンでランキングされる最近のそういった曲、軽い歌詞・メロディーとは体質的にあわないからです。しかし、氷室さんが歌えば話は別です。まさか氷室さんがここまで格好よく歌えるとは思っていませんでした。


***


さてここからはそれぞれの曲について見ていきましょう。1曲目の「VIRUS」はギター・ベース、そして氷室さんのラップがポイントです。かなり格好良い曲です。それっぽいソロ(?)なので、ギターはスティーヴだろうか。歌詞は社会を風刺・反発めいたものになっていたのですが、こういう曲ではどうしてもこうなってしまうのでしょうか。他のタイプにできないのでしょうかね。別にこれでも問題はありませんが。


2曲目の「Weekend Shuffle」はおそらく好き嫌いが激しいものになるでしょう。メロディーと歌詞があまりにも癖がありすぎます。冗談が好きな人なら気に入りそうな感じの曲です>どういう曲?。個人的にはやはりギターのリフとドラムがすごい好きです。


先述したように、アルバムのタイトルでもある「FOLLOW THE WIND」はかなり邦楽チックな曲です。ラヴバラードな曲ですが、歌詞がとても素敵です。メロディーはとても綺麗なのですが、編曲に少しポップすぎる感があり、このアルバムの中では少し異色を帯びています。ライブで聴いた時は、なんとなく「あら素敵」と思ったのですが、CDで聴くと少しポップになってないかと、メロディーに媚びてないかと思いました。まあ、ライブとCDと比べるのはどうかと思いますけどね。


「MONOCHROME RAINBOW」はサウンドがすこぶる良いです。こういう曲調はエスニックなサウンドとでもいうのでしょうか。アコースティックとキーボードの音使いが非常に良いです。氷室さんの「堕天使」「FLOWER DIMENSION」「The Vacant World(Without Love)」といった曲にみられるように、不可思議な雰囲気を持つ曲に仕上がってます。一見それほど目立った特長はありませんが、じっくり聴けば楽しめるものになってると思います。


「LOVE SHAKER」はこれまたファンキーな曲です。ラップを歌ってる箇所がポイントではないでしょうか。ラップといってもどこかしらやみつきになりそうなメロディーがあるので、私のツボにはまっております。少しだけダミ声が入ってるのがいいのです。ギターのワウの音からして弾いてるのはスティーブじゃないかな?そんな感じがします。完全にライブ向きな曲ですな。


「Claudia」はお家芸のビート系の曲。可もなく不可もない曲でしょう。デビューからこういった曲が多々でてますしね。相変わらずの氷室節ですな。ただ気になるのは歌詞です。歌詞担当の松井五郎・森雪之丞氏にしても、ビート系の曲ではどうもクサイ歌詞が多い。まあ、歌詞っていうのは大体そういうのが大半なんですけど(笑)。お家芸といっても、そろそろひねりを入れて欲しいと思うのは私だけでしょうか。


「FOOL MEN'S PARADE」はどういえばいいでしょうか。あんまり印象に残らない。それよりも次の「SACRIFICE」の方が気になります。何度も同じ表現で申し訳ないのですが、イントロのギターのハーモニクスやリフが印象に残っております(笑)。けどCoccoの「けもの道」のイントロに少し似ているような気が。


それよりも問題は「RAP ON TRAP」。この曲も例にもれずラップ調なのですが、あんまし好みではありません。どこにでもありがちで、よく耳にするような展開の曲調になっているからです。さらにいえば、森雪之丞氏の「語り」が入っている部分がとても嫌です。なんで彼の声が入ってるのだろう。正直言って長ったらしい上に邪魔なんですけど。


ラスト「ARROWS」はゆっくりとしたしみじみ聴ける曲です。メロディーがとても優しく感じられてグーです。アコースティックギターと氷室さんの声があってて良いのに、キーボードの音が少しうるさいのが難点です。ブルース調のギターを入れればいいのにと思うのは私だけでしょうか。それはともかく、Bメロの終わりからサビに移るところがポイントです。


抱きしめても まだ心は脅えている
手を離せば 壊れそうな夜だよ
きっとおまえの涙を見ると 泣いてしまう


ベタな歌詞ですが、その分ストレートに心にきます。氷室さんの曲でここまで「弱気な男」を表現しているのは他にありません。私もこれを聴いた時には、「わかる・・・わかるぜ・・・」と思わず唸ってしまいました。


この曲は男の弱い心を見事に表現しております。女性には理解できないかもしれませんが、男にはそういう弱い部分があるんですよ。心許した相手にだけ素直な自分になることがあるんですよ!>昔何かあったらしい


***


さ、個人的な感傷はともかくそろそろまとめに入りましょう。このアルバムでは今までにない氷室京介が見れました。それは新しいジャンルのラップ・ヒップホップを始めとする、アメリカのファンキーな音楽分野の影響が各所でみれます。「VIRUS」「LOVE SHAKER」「RAP ON TRAP」がそうです。又「Weekend Shuffle」といった面白い曲も新鮮でした。


サウンド的にも歪ませたギターが中心となっており、重苦しい雰囲気の曲が多々ありました。その中でポップな曲は「FOLLOW THE WIND」だけです。アルバムを聴いてホッとさせる曲はここぐらいではないでしょうか。基本としては、パワー・勢いがあるアルバムに仕上がっておりますね。


とはいえ、ラップ・ヒップホップ調の歌詞はイマイチでした。ただ威勢がよくて、韻を踏んだ言葉を羅列しただけのありふれたものに仕上がっているからです(私がヒップホップを嫌う理由の一つでもある)。勿論、氷室さんが歌えばそれなりに格好よく聴こえており、「LOVE SHAKER」はかなりいけてると思っています。


しかし、「RAP ON TRAP」ではどこにでもありがちな曲に陥っており、評価はああいう結果になるわけです。さらに言えば、森雪之丞氏の朗読の部分です。アルバムを聴く前に歌詞カードの製作者一覧を見てみると、「Poetry Reading:Yukinojo Mori」と書いてあったので嫌な予感はしていたのですが、案の定やっちゃってましたね。ラップ・ヒップホップ関係の曲の印象は面白いとは思いますけど・・・ま、そんなもんですかね。


一方、「MONOCHROME RAINBOW」の音使いや「FOLLOW THE WIND」「ARROWS」のストレートな歌詞とメロディーはさすが氷室京介・森雪之丞といった感じでしょうか。だてにキャリアは積んでおりませんな。とはいえ、インパクトが大きかった「I・DE・A」「MELLOW」のアルバムを超えるものではなく、それの後継版であるという印象が残りました。


以上から総合的に見て、このアルバムは結構まとまっていて悪くはないのですが、非常に良いというわけでもありません。普通かなあ。良い曲はあるのですが、名曲がない・・・つまり心の底から良いといえるような曲がひとつもないと感じてしまうのです。違和感を感じたのはそれでしょうか。もしくは★が平均してバランスがとれてるせいなのか。ううむ、難しいところです。


でも私の場合は、何度も聴きこめば「これは名曲だ!」と言う事が多々あるので、後から評価はコロコロ変わるとは思いますけどね(笑)。あとは気分次第だしなあ。名曲になりそうなのは「ARROWS」かな。妙に気になる曲なんですよ。ちなみに氷室さんのアルバムを聴けば聴くほどよくなっていくことは、噛めば噛むほど味が出るイカと同じだなと思ってはいけないことでしょうか。


***


どうでもいい話なんですが、このアルバムを初めて見た時、ジャケットに写ってる氷室さん吉川晃司だと思ったのは私だけでしょうか。あのサングラスのかけ具合と口の形でそう思ったのですが・・・いや、もういいです。